テクノロジーとは

「テクノロジー」 はテクネー(ingenuity) + ロゴスとして、産業革命以降の技術革新をもたらした力を体系化するために1802年にドイツで考案された。

テクノロジーは人為で有形で反自然的なものとは限らない。チンパンジーが石で木の実の殻を割ったり、鳥が木の枝で巣を作ったり、人間が社会をより良くするために生み出した法律もテクノロジーである。

テクニウムとは

種々のテクノロジーを相互に結びつけるシステムであり、自律的な創造性をもつ。 自律性とは、自己修復や自己複製、自己制御等を持つことである。

システムが自律性をもつとはどういうことか

人はそれ自体として自律性をもっているわけではない。植物や体内の細菌などに依存している。つまり、システム全体として自律性をもっている。

テクニウムの変遷と人との関係

テクニウムは人類以前から存在するが、テクニウムは人に依存し、人はテクニウムに依存している。つまり共生関係にある。どちらが主人でどちらが奴隷ではない。

テクノロジーにおける大きな変化は、ホモ・サピエンスが言語を発明したことである。言語とは自分の精神的活動にアクセスするためのものであり、学習と創造を加速する。言語によってアイデアが生まれ、テクノロジーが生まれる。また言語の導火線になったはテクノロジーであるとも言われる(例えば、物を投げて動く動物に命中させるには脳内で素早い計算を必要とする)。

テクノロジーが発達し、ある程度の人口と繁栄がもたらされると、そこには16世紀に科学が生まれる。科学という知性を体系化し、それを共有し、新たな実験、発見を行うというループはある程度の人口と繁栄がないと効力をもたない。科学が確立されると、人口増加→エネルギー消費+科学→テクノロジーの進歩というテクニウムの自己強化回路が形成される。

テクニウムの必然性

生命は収束進化する。これは主に物理的、化学的制約の外的要因と遺伝子結合や代謝経路における自己組織化の複雑性の内的要因によってもたらされる。(=構造的必然性) 生命の進化は3つのベクトルで捉えられる。構造的必然性、機能的適応性(無意識の自然選択)、歴史的偶発性(偶然の蓄積による慣性)

テクニウムも収束進化する。同時多発的に同じものが発明されるという歴史が繰り返されている。テクノロジーの進化は3つのベクトルで捉えられる。構造的必然性、意図的開放性(ホモ・サピエンスによる意図的なデザイン)、歴史的偶発性。

本書ではエントロピーの反語として収束する力としてエクソトロピーという造語を用いている。

反テクノロジー、テクニウムは人に幸福をもたらすか

ホモ・サピエンスの誕生、テクニウムの加速により 地球が人に及ぼす力 < 人が地球に及ぼす力 となった。

そして、今後テクノロジーの進化速度と人の進化速度を比べれば 人がテクニウムに及ぼす力 < テクニウムが人に及ぼす力 となるのは必然である。

人類はこの流れを止めるべきなのだろうか? 歴史から考えると、テクノロジーの進歩によって、人類は選択肢を拡大し生き延びてきた。反テクノロジー思考は理性を失わせるリスク回避志向であり、代替リスクは考慮していないものだと筆者は言う。過去の発明品を考えると(軍事→実用等)、テクノロジーがもたらす正負の効果は予測できないものであり、二次効果は使ってみなければ分からない。現在の予防原則から5つの項目からなる事前行動原則への移行を唱える。

  1. 予測とシュミレーション
  2. 継続的評価
  3. リスクの重み付け、優先付け
  4. 被害→修正
  5. 禁止→方向転換

アーミッシュ

アーミッシュは反テクノロジーではない。必要なテクノロジーを厳選して、集団的強制力のもと生活を営んでいる。 彼らの生活から言えるのは、個人の満足を最大化するには最小限のテクノロジーを選択することが有効だが、他人の満足を最大化するには世界全体のテクノロジーの量を最大化する必要がある。最大化のジレンマ。

要約

テクニウムは自律性をもち、人と共生している。人はテクニウムなしでは生きられない。テクニウムのエクソトロピー的性質(効率、機会、出現、複雑性、多様性、専門性、偏在性、自由度、相互度、美しさ、感受性、構造性、進化性の増加)を理解し、方向性をデザインしながら続けることが目的の無限のゲームを遊んでいくしかない。って感じ

巻末参考文献で気になったもの

  • アーサー「テクノロジーとイノベーション」
  • カーツワイル「シンギュラリティは近い」
  • ブランド「地球の論点」
  • タッジ「農業は人類の原罪である」
  • ブロノフスキー「人間の進歩」

テクニウムとテクノロジーの未来

概要

  • 著者: ケヴィン・ケリー
  • 発行年: 2010年(英語版)
  • ジャンル: テクノロジー哲学、未来学

要約

テクノロジーとは何か?

A: テクノロジーとは「テクネー(創造性・技術)+ ロゴス(体系)」として生まれた概念で、人為的で有形のものだけでなく、法律や言語など無形のシステムも含まれる。自然界の動物の道具使用も広義のテクノロジーと捉えられる。


テクニウムとは何か?

A: テクノロジー同士が結びついたネットワークであり、自律的な創造性を持つシステム。「自己修復」「自己複製」「自己制御」といった性質を備え、人と共生関係にある。

  • テクニウムはホモ・サピエンスの誕生以前から存在し、人間社会と共に進化してきた。
  • 言語の発明が、アイデアとテクノロジーの進化を加速させた。

テクノロジーの進化の必然性

A: テクノロジーは以下の3つのベクトルで進化する:

  1. 構造的必然性: 物理的・化学的制約による収束進化。
  2. 意図的開放性: 人間によるデザインの自由度。
  3. 歴史的偶発性: 偶然の蓄積による進化の方向性。
  • エクソトロピー(収束の力): 効率、多様性、自由度、美しさなどが増加する方向性を示す造語。

個人の幸福とテクノロジー

A: 個人の幸福感を高めるには「最低限必要なテクノロジー」を選び取ることが有効。
しかし、他者や社会全体の幸福を考えると、テクノロジーの最大化が求められるためジレンマが生じる。

  • アーミッシュの例: 必要なテクノロジーを集団で厳選し、最小限の使用に留めている。
  • デジタル・デトックスやミニマリズムも同様の考え方を現代社会に適用している。

テクノロジーの遍在性と未来

A: IoTやAIの進化により、テクノロジーの「遍在性」と「自律性」がさらに高まることは必然と考えられる。

  • 恩恵: 便利さ、効率性、選択肢の拡大。
  • 課題: プライバシーやセキュリティ、格差の拡大。

テクノロジーの進化に対する倫理的視点

A: 現在の「予防原則」を超え、以下の「事前行動原則」を実践すべきと提言:

  1. 予測とシミュレーションの活用。
  2. 継続的な評価。
  3. リスクの優先順位付け。
  4. 被害への柔軟な修正。
  5. 禁止ではなく方向転換。

個人の考察

テクノロジーと個人の選択

  • あなたの見解:「最低限のテクノロジーの使用」で満足を得ることが個人の幸せに繋がるという点は、アーミッシュの考え方に近い。
  • 一方で、社会全体では「テクノロジーの最大化」が必要であり、格差や選択肢の違いによるジレンマが発生する。

テクノロジーと未来社会

  • AIとIoTが普及すれば、テクノロジーはさらに遍在し、個人と社会のバランスをどのように保つかが重要な課題となる。

巻末参考文献で気になったもの

  • アーサー『テクノロジーとイノベーション』
  • カーツワイル『シンギュラリティは近い』
  • ブランド『地球の論点』
  • タッジ『農業は人類の原罪である』
  • ブロノフスキー『人間の進歩』

補足資料