ニュートン力学は物体の運動を決定論的に記述する理論であり、特に多くの粒子からなるマクロな物体の運動については、個々の分子のランダムな運動(ブラウン運動)が多数の分子の統計的な挙動として記述され、中心極限定理によりその運動は正規分布に従うことから、系全体としての法則が成り立ちます。これに対し、量子力学は非常に小さなスケールで成り立つ理論であり、個々の粒子(例えば、電子や原子)の運動は確率的に振る舞い、エネルギー準位は連続的ではなく、特定の離散的な値を取るという量子化現象が現れます。シュレーディンガーは、この量子力学の視点から生命の複雑な現象を理解しようとし、ド・フリースが発見した突然変異のような現象を物理学的に説明しようと試みました。